また夢を見てしまった。昔好きだった女の子の。夢の中に彼女が現れ、それを遠くで眺めている自分。会話するわけでもない、ただ少し離れたところで、たくさんの人たちに囲まれ、明るい笑顔を見せているあの娘。それを羨ましそうに横目で、あの娘を追っている自分。
疲れたとき、嫌なことがあったとき、辛いとき、必ずと言ってあの娘の夢を見る。中学校時代の遠くて、淡い思い出。親しく話したことも3ヶ月ぐらいで、後はクラスが違ったため、話しかけることも適わなかった。修学旅行先の京都の旅館で人づてに告白されたことがあった。そのとき、僕に付きまとっている女の子だと思い、冷たくあしらってしまった。その夜友人から「今日来たのは、彼女だよ。彼女泣いていたよ。」と言われ、取り返しのつかないことをし、愕然とした。
反面ほっとしたことも事実だった。あの頃の彼女はスポーツ万能、明るい性格で皆の人気者、それに引き換え、僕と言えば、暗くて、貧相で、友達もいず、愚痴ばっかり言っている鼻つまみ者、付き合っていく自信もなかった。それから、僕と会うのを避けていた。街であっても、知らん顔して通り過ぎた。また、お互い話すこともなかった。ただ、何故だか、彼女には浮いた話は聞こえてこなかった。僕はと言えば、相変わらず、孤独でつまらない学生生活をおくっていた。もちろん相手してくれる女の子などいるはずもなく…。そうこうするうちに田舎での学生生活は終わりを告げた。
最初に彼女の夢を見たのは、高校を卒業した年の7月、夏の蒸し暑い雨の夜だった。その頃僕は大学受験に失敗し、双子の弟と小倉の3畳1間の安下宿にいた。夢の中で彼女は泣きながら「あなたが悪い、あなたが悪い。」と言っている。鈍感な僕でもその意味することはわかっていた。
それから、疲れたとき、嫌なことがあったとき、辛いとき、必ずと言ってあの娘の夢を見る。彼女がいて、それを遠くで眺めている自分。会話するわけでもない、ただ少し離れたところで、たくさんの人たちに囲まれ、明るい笑顔を見せているあの娘。それを羨ましそうに横目で、あの娘を追っている自分。夢の中の彼女は何を言いたいのか解らない。「頑張って」言いたいのか、「ざまあみろ」と言いたいのか、ただ、夢を見た後は、しばし、嬉しい気持ちになる。若かりし日の淡い思い出。
つまらない話でした。ごめんなさい。
写真:無料写真素材 写真AC 清水寺 JAKUTAKU