報道や今までの常識とされたもの、これをいったんは疑ってかかったほうがいいかもしれない。例えば、東日本大震災の瓦礫の処理。マスメディアは処理に非協力な自治体に対して、「日本人の絆」はどうしたんだと非難をしているが、そもそも何故、途方もない量の瓦礫が未だ処理されないのか?またどうしてわざわざ高い輸送費を払ってまで距離の離れた地方に持って行って処理しなければならないのか?といった疑問をなぜか報道しない。そもそも震災の後始末とも言うべき瓦礫の処理は被災地に処分場を作り、出来るだけ被災地で処理すればいいわけで、どうしても処分が困難な場合のみ地方にお願いすればいい。そもそもそんな事はすでに終了していなければならないし、震災後1年経ったいま議論すべき問題ではない。それが未だドタバタし、瓦礫処分の目途すら立っていないのは、明らかに政治家やエリート官僚達の怠慢が原因であり、そのことをマスメディアが糾弾しようともしない事が問題である。
最近、武田知弘さんが祥伝社から2006年に発表した「ヒトラーの経済政策」を読んだが、この本に書かれてあったことは冒頭に述べた事を痛感した。
ヒトラー及びナチスドイツ、これらの印象は‘ユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)’、‘ファシスト’‘第二次世界大戦を引き起こした男’etc、散々なものである。特にユダヤ人の大虐殺は凄惨を極めるもので、一説によると約600万が犠牲になったとされている。その真偽はともかく、ヒトラー及びナチスドイツは‘悪の代名詞’のような存在である。ではなぜヒトラーが台頭したのだろうか?大概の歴史の教科書にはこのような内容だろう。第一次世界大戦の巨額の賠償金支払い、最大工業地帯であるルール地方のフランスへの割譲、未曾有のハイパーインフレ及び世界恐慌によって疲弊したドイツは未曾有の大不況に見舞われ、街には失業者であふれ、国家はボロボロの状態にあった。こうした苦境からの脱出の為、ドイツ国民は変化を求め、それに呼応する形でヒトラー率いるナチスが台頭し、以後独裁的に権力を掌握した。
だが変化を求めてもそれに対して結果が伴わなければ、国民はすぐにそっぽを向いてしまう。それは民主党の2大スター、‘ポッポ’と‘貝割れ’が証明している。
ヒトラーが政権を担うや、失業率は大幅に改善され、世界恐慌以前の水準までドイツ経済を復興させた。また国民生活においても労働環境の改善が整備され、医療・厚生・娯楽など当時として最高水準のものを労働者に提供している。8時間労働制、年間休日の増加、有給休暇及び健康診断の導入、福利厚生施設の拡充など労働者にとって至れり尽くせりの制度を導入している。また減税して税収を上げたり、逆に大企業には増税を課し、世界初の禁煙運動、公務員の天下りの禁止、大規模店舗の規制、中小企業の貸し渋り対策をするなど弱者に優しい政策を次々と実行している。こうして1938年には国民総生産で世界最高水準までドイツ経済を復興している。経済学者のケインズはヒトラーの経済政策を絶賛しているが、ケインズは‘ニューディール政策’で味噌をつけた。同じ公共事業で雇用を創出し、経済を活性化を図るという点では、ヒトラーの‘アウトバーン’の建設の方が、波及効果がはるかに大きく、こと経済政策においてはヒトラーの方がケインズを凌駕するほど有能だと思う。ヒトラーが様々な経済政策を成功に導いたのは‘天才財政家’と呼ばれるシャハトの存在なくしては語れない。シャハトは第一次大戦後のドイツの‘ハーパーインフレ’を収束した‘レンテンマルクの奇跡’で有名である。ヒトラーの経済政策を殆どをシャハトが発案・実行したのだが、そのような有能な人材を登用したことも、ヒトラーの功績と見ていいだろう。
物事をある一部分だけ見て全体を判断するのは良くない。ヒトラーのユダヤ人虐待を否定する訳ではないが、それのみをクローズアップされ、成功を収めた経済政策がほとんど評価されないのはおかしい。特に長年続いている我が国の経済政策にもこのヒトラーの経済政策は参考になるのではないだろうか?「ヒトラーの経済政策」の著者、武田知弘氏はあとがきで次の事を言っておられる。
初期のナチス・ドイツ経済相シャハトがいったように、国際経済に一人勝ちはあり得ない。どこかの国だけが潤って他の国が困窮するような状態は、一時的には生じるかもしれないが、長くは続かない。その矛盾はやがて恐慌や戦争という形で、噴き出すことになる。その結果、国際社会はより多くの代償を支払わなければならない。
これは国際社会に限らず、「経済そのもの」にもいえることだろう。
特定の人だけが潤っているような社会は長く続かない。それは歴史が証明したことである。
「増税しなければ、国は破滅する」と馬鹿の一つ覚えのように叫んでいる何処かの国のボンクラに聞かせたい言葉である。野田さん、あんたの事だよ!
ヒトラーの経済政策-世界恐慌からの奇跡的な復興 (祥伝社新書151)
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