今年もイグ・ノーベル賞の季節になりました。「人々を笑わせ、考えさせてくれる」研究に対して授与される“イグ・ノーベル賞”。今回も日本人が受賞、これで日本人のイグ・ノーベル賞受賞は10年連続の快挙となりました。受賞となった研究内容も今までと同様にユニークなものでした。産経新聞の記事からです。
ユニークなテーマに取り組む世界の研究者に贈られる今年の「イグ・ノーベル賞」の授賞式が、米ハーバード大で行われた。上半身をかがめて股の間から物を見たら、普段の見え方からどんな変化があるかを研究した立命館大文学部の東山篤規教授(心理学)らが「知覚賞」を受賞した。
多数の学生ボランティアで実験し、頭部が胸より下になる股のぞきの姿勢では、見える風景の距離感が正確につかみにくくなることを証明。股のぞきに関する論文など数々の研究が評価された。
東山教授は受賞講演で「まず私がやってみせましょう」と壇上ににて股のぞきを実演。他の部門で受賞した研究者たちや観客らも同じポーズを取り、会場は大きな笑いに包まれていた。
産経新聞 2016年9月24日付 社会面 チャイムより引用
“股のぞき”って、天橋立でよく見かける股の間から景色を逆さまに見る行為ですよね!あれって何のためにやっているのかよくわからなかったのですが、股のぞきをすることで、天地が逆になり龍が天に舞い上がるように見えるそうです。これは明治後半に観光事業活性化の一環として喧伝され、観光客を通して広まったといわれています。
東山教授は「視覚による空間知覚」などが専門で、今回の受賞は2006年に発表された論文「股のぞきの世界 大きさの恒常性の低減と見かけの距離の短縮」などの研究が評価されたようです。それによると、東山教授は「前かがみの姿勢で股の間から見ると、物が小さく距離も近くに見える。それは体の姿勢が深く関係している」ことを実験で証明しました。東山教授によると、実験に協力してもらおうと声をかけると、男性には呆れ顔をされ、女性には「恥ずかしからできない」と当時を振り返っていました。
股の間から見ると・・・「イグノーベル賞」に日本人2人(16/09/23)
東山教授以外の今年のイグ・ノーベル賞、他の分野の受賞研究でも東山教授の研究に負けず劣らずユニークなものばかりです。下の表は今年のイグ・ノーベル賞を受賞された方とその受賞理由の一覧です。
受賞名 | 受賞者 | 受賞理由 |
生殖賞 | 故アフメド・シャフィリク(エジプト) | ポリエステル・綿・ウールでできたズボンがそれぞれラットの性生活にどのような効果を与えるかを研究したこと、および人間の男性に対しても同様の実験を行ったことに対して。 |
経済学賞 | マーク・アヴィス、シーラ・ファーガソン(ニュージーランド)、サラ・フォーブス(イギリス) | 販売とマーケティングの観点から、岩石から感じられる個性を評価したことに対して |
物理学賞 | ガボート・ホルヴァート、、ジェルジ・クリシュカ、ベーテル・マリク(ハンガリー)、ミクローシュ・ブラホー、ラモーン・ヘゲディシュ、バラーシュ・ゲリクシュ、ローベルト・ファルカシュ、スザンヌ・アケソン(国籍不明)、ハンスリュージュ・ヴィルデルムート(スイス) | 白い馬がもっともアブに刺されにくい馬である理由と、トンボが黒い墓石に引きつけられて激突死する理由を発見したことに対して。 |
化学賞 | フォルクスワーゲン社(ドイツ) | 自動車の排ガス問題を、検査時には自動的・電気機械的に排出量を減らすことによって解決したことに対して。 |
医学賞 | クリストフ・ヘルムヒェン、カリーナ・パルツァー、トーマス・ミュンテ、シルケ・アンダース、アンドレアス・シュプレンガー(ドイツ) | 体の左側がかゆいとき、鏡を見て右側をかくとかゆみが治まることを発見したことに対して |
心理学賞 | エヴリーヌ・デベイ、マールテン・デ・シュライヴァー、ゴードン・ローガン、クリスティナ・スホツキ、ブルノ・フェルスフエレ(国籍不明) | 1000人のうそつきにうそをつく頻度を尋ねたこと、およびその答えが信じられるかどうか特定したことに対して。 |
平和賞 | ゴードン・ペニークック、ジェームズ・アラン・シェイン、ナサニエル・バー、デレク・ケーラー、ジョナサン・フーゲルサング(国籍不明) | 『深遠さを装ったデタラメの受容と看破について』と題された、学者らしい研究に対して。 |
生物学賞 | チャールズ・フォスター(イギリス) | その時々に、アナグマ、カワウソ、シカ、キツネ、鳥となって大自然で生活したことに対して。 |
トーマス・スウェイツ(イギリス) | 両手足に装着してヤギそっくりに歩くことのできる装具を製作して、ヤギの群れに交じって野山を放浪して過ごしたことに対して。 | |
文学賞 | フレドリック・シェーベリ(スウェーデン) | 死んだハエや、まだ死んでいないハエを収集するよろこびを描いた、3巻におよぶ自叙伝に対して。 |
知覚賞 | 東山篤規(立命館大学)、足立浩平(大阪大学) | 前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると、違って見えることを調査したことに対して。 |
Wikipediaイグ・ノーベル賞受賞者の一覧2016年より引用
今年も私なりのコメントを各賞についてしてみました。ただ今年は東山教授の知覚賞以外はあまり詳細な情報が見つからなかったので、コメント自体が頓珍漢なものになってしまいました。申し訳ありませんが、悪しからずご了承ください。
生殖賞:ズボンの素材が性生活にどのような影響を与えるかをラットで実験
実験に使われたラットをNetで拝見しましたが、パンツを履いたラットの絵でした。この場合、ラットはどうやって生殖行動に移るのかなあ!?ラットがパンツを脱ぐのか、だとしたらどうやって?前足を使う?少々疑問が残りました。ちなみに綿とウールは正常で、ポリエステルの素材は生殖行動が鈍るとのことでした。どうやら静電気の影響だそうですが、これって・・・。
経済学賞:販売とマーケティングの観点から、岩石から感じられる個性を評価
今ひとつ理解に苦しむ内容で、一体何を言いたいのか皆目見当もつきません。岩を擬人化したらどういうイメージなるのかということなのでしょうが、深読みすれば既成のマーケティング理論に対する挑戦かもしれませんね。
物理学賞:白い馬がアブに刺されにくく、トンボが黒い墓石に引きつけられる理由を発見
世の中には観察眼が鋭い人がいるもので、それに行動力が加わると凄い発明や発見をするのでしょうね。会社でも仕事のできる人というのは皆このようなタイプで、物事を単視眼的でしか見ることができず、いつまで経ってもうだつが上がらない私には羨ましい限りです。恐らくこの研究をされた方々も観察眼が鋭い方々だとお見受けします。ちなみに理由は光の反射の特性だそうです。
化学賞:自動車の排ガス問題を、検査時には自動的・電気機械的に排出量を減らすことによって解決したことに対して
2015年9月にドイツのフォルクスワーゲン社の排ガス不正問題が発覚しましたが、やはりイグノーベル賞の選考チームはこの事件に目を付けていましたね。しかも選考理由が憎い。当然ですが、フォルクスワーゲン社の方へ授賞式には来なかったそうです。でも本当に来たらどうするんだろう?
医学賞:体の左側がかゆいとき、鏡を見て右側をかくとかゆみが治まることを発見
これは興味深い研究テーマですね。左腕がかゆい人の前に垂直に鏡を立て、右腕が左腕に見える状況を作り、かゆくない右腕をかくと、左腕のかゆみが収まるというもので、脳が左腕をかいていると錯覚するためだそうです。考えようによっては麻酔という概念がなくなってしまうということになるのでしょうか?これについては今後の進展に期待できそうです。
心理学賞:1000人の嘘つきに嘘をつく頻度を尋ね、その答えが信じられるかどうか特定したこと
まず疑問に思ったのは、どうやって1000人もの嘘つきを集めたということ。嘘つきが自分のことを嘘つきと認めるのかが疑問です。結果としては人間は成長するとともに嘘をつき、成人では1日平均で2回嘘をつくそうです。それがいつから下降線をたどるかはわかりませんでしたが、年齢が増すたびに嘘をつく回数が減るそうです。この結果も実は嘘だったりして・・・・!?
平和賞:『深遠さを装ったデタラメの受容と看破について』と題された、学者らしい研究に対して
全くデタラメなのに凄そうな単語を使ったり、意味がないのに難しい言葉を使うと人は何となく納得してしまいがちです。そうした愚かというべき人間の心理を研究したものだそうです。これは私はわかります。だってこのブログって意味がないのにやたらに小難しい言葉がよく出てくるもん!!
生物学賞:①アナグマ、カワウソ、シカ、キツネ、鳥となって大自然で生活したこと
②ヤギそっくりに歩くことのできる装具を製作して、ヤギの群れに交じって野山を放浪して過ごしたこと
①で受賞したチャールズ・フォスターさん、獣医で作家だそうです。アナグマ、カワウソ、キツネ、鳥 と同じ野生の生活を体験し本を書いたそうです。
②で受賞したトーマス・スウェイツさん、デザイナーだそうです。トーマスさん、仕事も私生活でうまくいかず、ヤギのように歩く人工の歩行器を作って、3日間スイスのアルプスでヤギの群れの中で生活したそうです。でトーマスさんが出した結論が、「人間社会も大変だが、ヤギの社会も大変だ」とのことでした。毎度・・・・。
トーマスさんが人工の歩行器を使ってヤギのように歩く動画がありました。何だか辛そう!?こんな格好で3日間も山の中で暮らすなんて、トーマスさん凄い!!
「人間でいるのを休みたい」ヤギになってみた英国人男性 'Goat Man' recounts his ewe-turn in life
文学賞:死んだハエや、まだ死んでいないハエを収集するよろこびを描いた、3巻におよぶ自叙伝
よくこのような小説を見つけてきたものだと、イグノーベル賞の選考チームの情報力には脱帽いたします。受賞されたフレドリック・シェーベリさん、彼は一体何者?作家?ハエの研究家?ハエのコレクター?ハエを収集してどうするのでしょうか?昆虫採集のように箱に入れて標本にするかな?まあ私にはどうでもいいことですが・・・。
ちなみにAmazonの商品紹介に「まさかあるわけないだろうなあ」と思って、冷やかしでフレドリックさんの名前を入れたら出てきました。しかも発売されたのが最近!!以前から注目されていたのですかねえ!?世界の流行りってわかりませんねえ!?
知覚賞:前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると、違って見えることを調査した
ネットや新聞では東山教授ばかりが注目をあつめ、どういう訳か共同受賞者である大阪大学の足立浩平教授は名前はフリップでしか出てきません。せめて一社くらいは取材をしてあげたらいいのにと老婆心ながら思ってしまいます。
イグノーベル賞の賞金は10兆ジンバブエ$、そんな大金をもらって東山教授は何に使うのでしょうか?もっとも日本円にしたら0.03円だそうです。
イグ・ノーベル賞についての 過去の記事です。今回2014年10月にアップした記事にバナナの写真を入れてみました。2014年は北里大学の馬淵教授が、バナナの皮で滑ることについて考察して、イグ・ノーベル賞を受賞しています。
参照:産経新聞 2016年9月24日付 社会面 チャイム
東京新聞 2016年9月23日付夕刊
Wikipedia イグ・ノーベル賞、イグ・ノーベル賞受賞者の一覧、股のぞき、ラット
スラド イグノーベル賞2016受賞式、日本人は10年連続受賞
立命館大学 文学部 東山篤規教授が「イグ・ノーベル賞 知覚賞」を受賞
化学業界の話題 2016年イグ・ノーベル賞
そよ風速報 2016年イグノーベル賞の受賞一覧!
10年連続日本人受賞の快挙を成し遂げた研究内容とは?
写真:無料写真素材 写真AC 天橋立で股のぞきをする兄弟 s***********************m
お恥ずかしい文章ですが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
ランキングに参加しています。クリックして応援していただけたらうれしいです!