五つの池の喫茶店

私が日々思っている事を徒然なるままに書き綴ってみました。興味のある方はお立ち寄りください。OCN CAFEに2004年9月から記載された日記をOCN Blog人に引き継ぎ、さらにこのHatenaBlogに移設いたしました。

私の愛したウルトラセブン~その3

 11月も終盤になってしまいました。ウルトラセブンの続編の記事も10月にあと2つ書くところが、仕事の煩雑と疲れもあってほったらかしになったままでした。今回は「私の愛したウルトラセブン」の第3段、ドラマの脚本と脚本家について考察します。

 

夭折した天才脚本家・金城哲夫

 

 ウルトラセブンには多くの方が脚本を書かれていますが、その中でも異彩を放っていた一人が金城哲夫さんです。金城さんは1938年沖縄県生まれ。玉川大学在学中より脚本家を志し、大学の恩師である上原輝男さんを介して円谷英二さんを紹介され、円谷プロに出入りするようになりました。円谷英二さんの紹介で当時東宝の特撮映画で活躍されていた関沢新一さんから脚本家としての指導を受けました。1963年に円谷プロに正式に入社後は企画文芸部の主任としてウルトラシリーズの企画立案と脚本を手掛けました。金城さんは自身の脚本のみならず、他の脚本家への発注などのプロデュ―ス的役割も務め、まさに八面六腑の活躍をされ、初期の円谷プロの最大の功労者の一人とされています。

 金城さんはウルトラセブンで10作ほど脚本を手掛けています。金城さんは怪獣の名前からストーリーを作り上げられるという天才的な才能を持っていたようで、テレビ局側の要請とウルトラシリーズの世界観が逸脱しないようにバランスよく脚色されています。

 金城さんが手がけた作品は娯楽性が高いものが多いですが、中には子供番組とは思えないメッセージを含んだ作品があります。それは「狙われた街」と「ノンマルトの使者」。特に「ノンマルトの使者」は虐げれれた者の視線から見た「平和」の虚構を描いた作品です。

 ダンとともに海で休暇を楽しむアンヌの前に、オカリナを持った少年が現れ、海底開発の中止を促す。やがて、海底開発センターのシーホース号が爆発。調査を始めた地球防衛軍に、少年の声で「海底はノンマルトのものだ」という電話が入る。ダンは、ノンマルトとはM78星雲では地球人を意味することを思い合せ、首をひねる。その後、アンヌと再会した少年は「真市」と名乗り、ノンマルトは人間に侵略された地球人だから海底に手を出すな、と再び警告。その直後、怪獣が現れて調査船を襲撃するが、ウルトラ警備隊に撃退される。しかし、それはノンマルトではなくガイロスだった。

 やがて、ノンマルトは奪った原子力潜水艦・グローリア号で陸への攻撃を開始し、ガイロスも再び現れる。攻撃中止を懇願する真市に心を痛めながらも、ダンは意を決して変身し、ガイロスを撃破。一方、グローリア号を撃沈したハイドランジャーは海底都市を発見するが、キリヤマは人類以前に先住民族がいた可能性を振り切るかのように、破壊を命じる。

 平和は戻ったが、心の晴れないダンとアンヌは、真市の叫びを聞いた気がして岩場に駆けつける。そこでふたりが出会ったのは、2年前に死亡した真市という少年の墓参りをする母親。その墓前にはオカリナが供えられていた・・・・・・。

          ウルトラセブン エピソードガイド 第42話 ノンマルトの使者より引用

 この作品は金城さんと満田みずほ監督が酒場で交わした何気ない会話がヒントになった作品です。金城と一緒に杯を酌み交わしていた満田監督がふと「地球人ってのは本当に一番最初から地球にいた人間なのかな?」といった一言がきっかけになり、金城さんが「それ、面白そうだ」と脚本を書いたそうです。

 この作品は批評家の間では当時アメリカの占領下にあった沖縄で生まれ育った金城さんの心情を吐露したものだとされています。しかし一方で円谷プロのスタッフの間ではこの考察については否定的な見解がなされています。実際に沖縄戦を体験した金城さんは母親が足を切断するなどの苦難に見舞われていたのにもかかわらず、金城さんからは沖縄や米軍の問題また戦争について語ることはなかったそうです。

 ウルトラシリーズの高視聴率で怪獣ブームを巻き起こした円谷プロでしたが、大人向けの特撮を目指した「マイティジャック」は平均視聴率が8.3%と惨敗、続く「怪奇大作戦」は平均視聴率が22%でしたが、スポンサーがウルトラシリーズの高視聴率と比較し、2クールで打ち切りになってしまいます。番組に受注が途絶えた円谷プロは経営悪化に陥り、大幅なリストラを断行します。金城さんも脚本家ではなくプロデューサーに専念するように迫られ、迷った末1969年に円谷プロを退社し、失意のうちに沖縄に帰郷します。

 沖縄に帰郷後の金城さんはラジオパーソナリティーや沖縄芝居の脚本や演出、沖縄海洋博の構成及び演出などで活躍しました。しかし1976年2月、金城さんは泥酔した状態で自宅の2階の仕事場へ直接入ろうとして足を滑らせ転落、すぐに病院に搬送されましたが、数日後脳挫傷のため亡くなりました。37歳でした。

 金城さんの生家だった沖縄県南風原町の料亭「松風苑」は2階の仕事部屋を「金城哲夫資料館」として保存しています。円谷プロは現在でも初期のウルトラシリーズでの金城さんの貢献を高く評価しており、2016年にはウルトラシリーズ放送50周年を記念して金城さんの名前を冠した脚本賞円谷プロダクションクリエイティブアワード 金城哲夫」を創設しました。

 

www.haebaru-kankou.jp 

子ども番組にこだわった脚本家・上原正三

 

 ウルトラセブンにおいて、12本の脚本を手がけ金城哲夫さん同様の功労者のひとりに上原正三さんがいます。上原さんは1937年沖縄県生まれ。中央大学在学中からアマチュア沖縄戦や米軍基地をテーマにした脚本を執書いていました。大学卒業後、病気療養のため一時帰郷中に金城哲夫さんと知り合いました。沖縄戦をテーマにした脚本「収骨」が芸術祭TV脚本部門で佳作入選し、授賞式出席のため上京した際に金城さんに誘われ、円谷プロに入社します。

 上原さんのウルトラシリーズのデビュー作はウルトラQの「宇宙指令M774」、続くウルトラマンでも2作の脚本を手がけます。ウルトラセブンでは金城さんが「マイティジャック」の企画を立ち上げるために多忙になったことから、同じ脚本家の市川森一さんとともに活躍しました。

 上原さんは1969年に金城さんが円谷プロを退社、沖縄に帰郷するのと同時に円谷プロを退社しフリーの脚本家となります。1971年から放映された「帰ってきたウルトラマン」ではメインライターを務め、「ウルトラマンA」「ウルトラマンタロウ」でも執筆を重ね第二次ウルトラシリーズの礎を築きました。その後は東映作品に活躍の場を移し、「ロボット刑事」「がんばれ!!ロボコン」「秘密戦隊ゴレンジャー」など一貫して子供番組の企画を担当し、東映ものでは特撮やアニメなど約1000本を超える作品を手がけています。

 一貫して子供番組の脚本を手がけた上原さんですが、ウルトラセブンにおいて子供番組の枠を逸脱するテーマを描いた作品があります。実相寺昭雄監督との共同作でロボットが人間を支配する異世界の恐怖を描いた「第四惑星の悪夢」はその最たるものですが、未制作で終わった脚本の中に沖縄出身のアイデンティティーを反映させた「300年間の復讐」というものがあります。これは江戸時代に薩摩藩琉球を侵攻した歴史的経緯を踏まえた作品で、上原さん自身も是非とも実現したかったと後に語っておられます。

 ウルトラ警備隊の特別訓練中にほかの隊員と逸れたアンヌ隊員は、濃霧の中冬の山中を彷徨う。謎の甲冑人間に襲われながら、アンヌは洋館に辿り着くも疲労と困憊の中に倒れこんでしまう。洋館の主で赤い髪の男“トーク”はアンヌを見て思わず「シシー」と叫ぶ。

 トークは300年前にトーク星から地球にやってきた宇宙人で地球人と交流を図りたかった。しかし地球人は武器を振り回し殺し合いをしている。トーク星人たちはひとまず山中に平和郷を築き住みつくことにした。しかし地球人たちはトーク星人たちの髪の毛が赤いという理由だけで平和郷を焼き討ちにする。トーク星人は3000年前に武器を捨ててしまっており、平和郷のトーク星人は成す術もなく焼き殺されてしまう。その中にトークの妹“シシー”がいて、アンヌはそのシシーに瓜二つだった。アンヌをシシーと思い込んだトークはアンヌに地球人に一緒に復讐しようと持ちかける。トークはシシーを殺された後、復讐の鬼となり300年かかってトーク星の武器を完成させたのだった。

 アンヌを救出すべく駆けつけたウルトラ警備隊のダンとフルハシ、悪戦苦闘しながらも何とかアンヌを救出する。そんな中ダンとアンヌは洋館の中で宇宙語で書かれたノートを発見し、宇宙語翻訳機で解読してトークの恐るべき意図を知る。

 トーク抹殺を図るウルトラ警備隊、アンヌを囮にトークを呼び出す作戦だったが、アンヌが躊躇する。そんなアンヌを見て、容赦ない声でダンはアンヌを作戦を断行するように促す。やがてトークはアンヌの呼びかけに応えて現れるが、そこに超兵器8が炸裂し、トークは「シシー!!」と叫べ絶命する。

 しかしトークの死体から巨大な“悪鬼”が出現、悪鬼はトーク星人の怨念が生み出した怪物で、文字通り鬼の形相をしている。悪鬼は超兵器8の攻撃をものともせず、武器である巨大な槌で超兵器8を叩き潰す。ダンはセブンに変身するも、アイスラッガーをかわされ、全身から伸びる布によりがんじがらめにされる。セブン危うし!?

 「トーク!」と叫ぶアンヌ、「復讐なんていけない!」と語りかけるアンヌに悪鬼は一瞬力を緩める。すかさずセブンは拘束を放ち、エメリウム光線を放ち悪鬼を粉砕。涙を流すアンヌ。悪鬼はトークの姿に戻り、やがて消えていった・・・。

 上の引用はネットにある「300年間の復讐」の記事を見て 自分なりにまとめたものです。上原さんはこの作品において、虐げられた沖縄人の立場から日本人の罪を告白したものでした。前にも述べたようには監督の野長瀬三摩地との意見の食い違いや着ぐるみが2体必要でお金が掛かり過ぎるという理由でボツになりました。ただ「宇宙人であるが故に謂れなき迫害を受け殺される」というテーマでは、「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」で実現されており、脚本も同じく上原さんが手がけています。

 「ノンマルトの使者」、「300年間の復讐」、いずれも虐げれた者の残酷な現実を描いた作品ですが、金城さんと上原さんの脚色の違いとして、モロボシ・ダン即ちウルトラセブンの関わり方が挙げられます。ノンマルトの場合は攻撃を躊躇するも、トーク星人の時は積極的に攻撃をしています。これはあるネットの人の意見ですが、その違いは実際の沖縄戦を経験しているかいないかで、前述のとおり金城さんは母親が足を切断する苦難に見舞われており、一方の上原さんは当時は九州に疎開されおり実際の戦闘体験はされていません。私は戦争体験もひもじい思いをしたこともないある意味“苦労知らず”ですので無責任なことは言えませんが、やはり実際の戦争体験というものはその人のその後の人生を左右する強烈なインパクトがあるものだと思います。

 

おわりに
 

  今回は脚本と脚本家、金城哲夫さんと上原正三さんについて記事にしてみました。実はウルトラセブンの最大の謎である「幻の12話」についても書こうとしましたが、すでに文字数が5000字を越えているため、次回に繰り越したいと思います。

 

過去の記事からです。
 

 

kitajskaya.hatenablog.com

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おまけの音楽

 


ウルトラセブン 哀惜のバラード【冬木透BGM】

 

 

 

 

ウルトラマン 「正義の哲学」 (朝日文庫)

ウルトラマン 「正義の哲学」 (朝日文庫)

 
ウルトラマンを創った男―金城哲夫の生涯 (朝日文庫)

ウルトラマンを創った男―金城哲夫の生涯 (朝日文庫)

 
金城哲夫 ウルトラマン島唄

金城哲夫 ウルトラマン島唄

 
キジムナーkids

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上原正三シナリオ選集

上原正三シナリオ選集

 

 

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参照:ウルトラマン オフィシャル データ ファイル

    ウルトラQ トピックインフォメーション 

            大車輪の活躍でウルトラシリーズを創った脚本家・金城哲夫

    ウルトラセブン トピックインフォメーション

      金城哲夫をサポートして作品のドラマ性向上に貢献した脚本家・上原正三

    ウルトラセブン エピソードガイド 第42話 ノンマルトの使者

   Wikipedia 金城哲夫上原正三、ノンマルトの使者、ウルトラセブン

   逆襲のジャミラ ノンマルトの使者~金城哲夫西へ

   300年間の復讐(ウルトラセブン) アニヲタWiki(仮)

写真:無料写真素材 写真AC ひめゆりの塔 daayoshi

 

 お恥ずかしい文章ですが、最後まで読んでいただきありがとうございます。

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