五つの池の喫茶店

私が日々思っている事を徒然なるままに書き綴ってみました。興味のある方はお立ち寄りください。OCN CAFEに2004年9月から記載された日記をOCN Blog人に引き継ぎ、さらにこのHatenaBlogに移設いたしました。

悪の論理、地政学のすすめ

 私は大分県の田舎町で高校生活を過ごしたが、高校時代はいい思い出がない。今で云う「引き籠り」の一歩手前までの状態、学校には登校しているが、ほとんど誰とも喋らず、朝から一人で机に座っていて、周りからはほとんど無視された状態だった。学校に馴染めず、学校にいる時間は長くて退屈だった。学生生活をエンジョイするすべも知らず、親しい友人など一人もおらず、一日誰とも喋らない日も多々あった。不登校にならなかっただけましなのかもしれないが、今となっては思い出したくもない無味乾燥、いや無意味な青春の日々であった。(幸いなことにいじめはなかった)淡いロマンスも無くはなかったが、結局それも叶わない夢物語に終わってしまった。 

 そんな悲惨な高校生活で、唯一の良き思い出は学校の図書館で1冊の本に邂逅したことである。その本は亜細亜大学倉持盛通氏が書かれた「悪の論理」というもので、読み終わって自分の中に強烈なインパクトを与えてくれた。よく梶井基次郎の「檸檬」という小説に多くの人が衝撃を受けたというが、おそらくそれに似た感覚だと思う。ちなみに私もその小説を読んだが、小説が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。ちょっと話は脱線したが、もっともこれによって後の自分の人生が劇的に変化したということはなかった。しかし大学の学部を選択をする際に、法学部政治学科を専攻したのは、社会科が好きだったこともあるが、やはりこの本に影響されたこともあったと思う。 

 この「悪の論理」、地政学について書かれたものである。地政学とは、ウィキペディアから引用すると、地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究するものであるという。地政学には海洋国家系の学派大陸国家系の学派があり、前者は主に英米で、後者は主にドイツで発展にしており、日本では、戦前ドイツの影響を受け大陸系地政学が盛んに研究され、「大東亜共栄圏」の概念を形成したとも言われている。戦後はGHQの指令により、日本の軍国主義膨張主義に理論的根拠を与えたとされ、「悪魔の学問」として学問自体がタブー視されてきた。この本が書かれたのは1970年代の後半、世界は冷戦の真っただ中、ソ連軍のアフガン侵攻イランの宗教革命モスクワ五輪ボイコット、日本に目を向けると日中平和友好条約が締結された頃だった。 

 なぜ今、この本のことを書こうと思ったのか、それは閉塞感漂う今の日本に必要なのはしっかりとした国家意識を持った政治家もさることながら、「悪の論理」が示す地政学という学問であると思ったからだ。国際関係は様々な問題に直面しており、更に近年は人口増、環境問題と難問が続出している。こうした中で地政学の研究が今後ますます必要になってくるだろう。30年近く前の記憶なので、あまり自信がないが、当時日中友好に沸く中で著者である倉前氏はすでに中国の欺瞞性を指摘していたと思う。また「情報」「資源」「食糧」を制する者は世界を制するとしている。いみじくもこの3つは戦略物資として展開しており、中国のレアアースの問題やアメリカの穀物メジャーの小麦やトウモロコシの独占を見ればそれは顕著である。地政学はその性格上、軍事に直結することは否めず、扱い方を間違えれば危険かもしれないが、非難を覚悟の上だが、国家戦略を構築する上でも国家としての生存権を確立する上でも必要悪だと思う。 

 中国やアメリカの例を見るまでもないが、国家はその国力が増大するにつれ、その力を維持するため、自らの「生存圏」を拡大しようとする。その手段が軍事力であり、経済力である。(文化力というのもあるかも知れない)自らの生存のためには当然のことながら小国、弱い国家は犠牲になる。それは軍事的な侵略・侵攻問わず、金融資本による経済的支配も含まれる。(これは私感だが、現在日本でも見えない所で着々と特定勢力による侵略が行われていると思う。自虐史観外国人参政権などはその布石で、近い将来日本は中国と韓国によって分割されるような気がする)国家として生存していくにはやはりPOWER(力)が必要であり、もしその力がないのなら、いかにして国家として存続を図っていくかという知恵、時には権謀術数が必要である。倉前氏はアメリカの軍人のマハンの理論を紹介しているが、その中で、「いかなる国家も大陸国家と海洋国家を兼ね備えることはできない。」とある。これは大陸国家のベトナムにおける海洋国家アメリカの敗退、大陸国アフガニスタンにおける海洋国家アメリカの撤退を見れば証明されている。これを日本と中国の関係で見れば、大陸国家中国は海洋国家日本に戦争を仕掛けても、勝てないと思う。ただし日本に相当の意思と覚悟が必要になってくるが・・・。 

 長々と書いてしまったが、「悪の論理」の著者である倉前氏は20年近く前に亡くなられている。もし生きておられて今の日本をご覧になられてどう思われる だろうか?自国民に冷たく、外国人(中国人、韓国人だが)に優しく、外国人が総理大臣を選べることができる国家、思わず卒倒してしまうかもしれない。    

悪の論理―ゲオポリティク(地政学)とは何か (1980年) (Ohtemachi books)

悪の論理―ゲオポリティク(地政学)とは何か (1980年) (Ohtemachi books)

 

 

f:id:Kitajskaya:20170214184847j:plain

 

写真:無料写真素材 写真AC 古地図 サンサン