五つの池の喫茶店

私が日々思っている事を徒然なるままに書き綴ってみました。興味のある方はお立ち寄りください。OCN CAFEに2004年9月から記載された日記をOCN Blog人に引き継ぎ、さらにこのHatenaBlogに移設いたしました。

静岡県、ついに首位陥落・・・。「日本一の茶どころ」の称号は鹿児島県に!!

 5月も中盤に入りました。早いもので、2021年ももうすぐ半分すぎて しまうことになるのですね。月並みですが、月日が経つのは本当に早いもの。ただ昨年初からの新型コロナウイルスの騒動もまだ終息はしていませんし、1年延期となった東京オリンピックパラリンピックも開催が危ぶまれています。この混迷はいつまで続くのかわかりませんが、1日も早くありふれた日常が帰ってくることを切に願っています。

  さて5月と言えば、新茶の季節、ここ静岡県は昔から「日本一のお茶どころ」として知られていますが、その日本一の称号を鹿児島県に奪われるというショッキングな事態となりました。


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 農林水産省が今年の2月に発表した統計によれば、2020年度の茶葉の収穫量静岡県が112600㌧、一方の鹿児島県は118400㌧でした。実は2019年度の茶葉の収穫量において、静岡県が129300㌧、一方の鹿児島県は137300㌧とすでに逆転していました。

 今回の発表で、静岡県に衝撃を与えたのが2019年度の日本茶産出額(企業でいう売り上げに当たる額だそうですが)で、静岡県が251億円(前年は308億円)に対して鹿児島県は252億円(前年は290億円)で僅差でトップの座を奪われており、これは統計を取り始めた1967年以降、54年連続で堅守した首位の座を失ったことになりました。

 ただ荒茶(茶葉を加工し仕上げ茶の原料となるもの)生産量に関しては静岡県が25200㌧と鹿児島県の23900㌧とリードしています。しかし僅差であるだけに、これから先は鹿児島県の追い上げに苦境は続きそうです。

 私は九州、大分県の出身ですが、お恥ずかしいことに鹿児島県がお茶の産地であることはあまり認知していませんでした。そもそも私が実家で過ごした1970年代後半は鹿児島でお茶が採れること自体、教科書すら載っていなかったのではないかと思います。

 九州で茶の産地と言えば、やはりお隣の福岡県の八女。八女茶は子供には高級なイメージがしていました。多分実家にいた時は大分県で採れたお茶を飲んでいたと思いますし、多分八女茶は飲んだことがないと思います。

 私としてはいわゆる煎茶と謂われるお茶よりも、もっぱら香ばしい香りがする玄米茶の方を好んで飲んでいた記憶があります。そういえば私の祖父は玄米茶が嫌いで、当時祖父と折り合いが悪かった母が嫌がらせで祖父に玄米茶を入れ、よく言い争いをしていました。

 統計を取り始めた当初の1970年、静岡県の荒茶生産量は48954㌧産出額は367億円、一方の鹿児島県は荒茶生産量で7182㌧産出額は26億円と静岡県が鹿児島県に大差を付けていました。そして50年という月日を経て日本一となった鹿児島県ですが、鹿児島県が躍進したのは以下のような理由が考えられます。

  • 鹿児島県の茶園は平坦で広大な土地を利用しており、そのため機械化が進み、省力化・低コストで茶葉を生産することできる。
  • 鹿児島県は温暖な気候のため、茶葉を晩秋まで生産することができ、また茶葉の栽培品種も多い。
  • 鹿児島茶はここ20年で需要が急拡大してきたペットボトル飲料向けに当初より注力しており、さらに鹿児島県は茶葉の海外への輸出にも力を入れてきた。
  • 鹿児島県の茶園は農業法人化が進んでおり、収益性も高い。
  • 鹿児島茶の新規就農者の9割が40歳未満と若手後継者が多い。

 上記の理由を見てみると、静岡県は鹿児島県に比べると大きなハンディキャップがあると思います。まず土地の問題ですが、私が初めて静岡県に来たときに驚いたのは、至る所に茶畑があったことです。静岡県は山がちの地形をしており、平地ではなく丘陵地に多く茶畑があり、更にこんな所誰が世話をするのと不思議に思うような辿り着くことすら困難な山頂の。しかも猫の額のような狭い場所にも茶畑がありました。これを目の当たりにすれば、確かに効率が悪く生産性や収益性も低いことが一目瞭然で、これでは後継者になる人も育っていくのは難しいのではと常々思っていました。

 また静岡県川根に代表されるように寒暖の差を活かし、昔から良質の日本茶を生産することで知られていました。ただそれが仇になってしまったようです。昨今のペットボトル飲料の急成長により、若い人を中心に自宅で急須でお茶を煎れる習慣が廃れてしまいました。今ではお茶と言えば、ペットボトルのお茶が主流であり、若い人は急須でお茶を入れる習慣などもはや無くなってしまっているかもしれません。

 そのため急須で入れるお茶の生産が主流の静岡県では、「お茶は急須で入れるもの」とする常識から脱却できず、生活様式や嗜好の変化に対応することは遅れてしまい、茶葉の生産量の低迷を招いています。

 今回、「日本一の茶どころ」の称号を奪われた静岡県ですが、肉薄する鹿児島県に対して手をこまねいていた訳ではありませんでした。静岡県では、2020年に茶の生産者、茶商、加工業者、飲料・機械メーカーや大学・研究機関、関係団体などから成るプラットフォーム「Cha Open Innovationフォーラム」を設立して、静岡茶のこれまでにない新たな価値の創造と需要を創出する取り組みを進めています。

 また以前の記事でも取り上げましたが、静岡茶の最大の産地である牧之原台地の半分を占める島田市では、2015年11月に新市制10周年を記念し、「まちの個性や魅力」を市内外に発信するシティプロモーションの取り組みとして、「島田市緑茶化計画」という緑茶グリーンを使用したまちづくりを推進しています。

 

kitajskaya.hatenablog.com

 昨年の11月12日には、この「島田市緑茶化計画」の賑わい交流拠点として、新東名島田金谷インターチェンジ周辺に大井川農業協同組合大井川鐵道株式会社、中日本高速道路株式会社、島田市の4者連携により、県下最大級の「緑茶・農業・観光の体験型フードパーク」をテーマとしたKADODE OOIGAWAがオープンしました。施設内は、マルシェ、産直レストラン、カフェ、遊び場、お茶の体験コーナーなどがあり、大井川流域の農作物や観光を楽しめる空間となっています。

 このKADODE OOIGAWAオープンのためになんと大井川鐵道は35年ぶりに新駅「門出駅」を開業。またお隣の五和(ごか)駅を「合格駅」に改名するほど念の入れようです。(ちなみに「門出駅」は無人駅です。)

 

kadode-ooigawa.jp

  静岡市でも、お茶に関する文化・伝統・産業等を守り、静岡市を日本一の茶どころとして育て、また次世代に継承していくとともに、静岡市の茶業が活力のある日本一の茶どころとして、持続的に維持・発展できるように、2008年に「静岡市めざせ茶どころ日本一条例」を制定するとともに、2009年には「静岡市茶どころ日本一計画」を策定しています。

 かつて静岡県といえば、鰻・みかん・茶が有名でした。養殖の浜松市で始まったとされており、私はてっきり静岡県が日本一の鰻の産地と思っていました。それが実は違っており、静岡県は全国4位、1位は茶と同様に鹿児島県でした。

 またみかん熊本県の激しい追い上げで2017年には全国4位に低迷しています。翌2018年には3位に返り咲いたようですが、TOP3を維持するのは苦しい状況のようです。

 そんな中、最後の砦だった茶でしたが、今回は残念ながらも鹿児島県に苦杯を嘗めてしまいました。今後条件の勝る鹿児島県に勝つのは難しいと思いますが、各自治体の施策が功を奏して、来年こそは「日本一の茶どころ」を鹿児島県から奪還できることを切に願っています。

 

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参照:Wikipedia 静岡茶、鹿児島茶

   産経新聞 2021年5月8日付 松本恵司

     日本の論点 静岡 飲む以外にもお茶の需要拡大へ

   あなたの静岡新聞 2021年3月15日付

     茶どころ静岡ピンチ お茶産出額1位陥落

   あなたの静岡新聞 2021年3月13日付

     静岡県 茶産出額1位陥落 史上初、鹿児島県に譲る

   南日本新聞 2021年3月16日付

     鹿児島、茶産出額全国1位に19年252億円、初めて静岡抜く

   J-CASTニュース 会社ウォッチ 2021年5月16日付

     「お茶」戦争が激化! 産出額で鹿児島が初の首位

                生産量も縮まる差に、どうする静岡

   農林水産省 令和2月 茶をめぐる情勢

   農林水産省大臣官房統計部 令和3年2月19日

           令和2年産茶の摘採面積、生葉収穫量及び荒茶生産量

   日本茶マガジン お茶の産出額日本一は鹿児島県!?歴史が動いた瞬間。

           鹿児島のお茶の生産量が静岡に追いつく?

                      かごしま茶の生産量が多い理由。

   静岡県経済産業部 静岡県茶業進行基本計画(平成26~29年)

                ~新たな時代に向けた静岡県茶業の展開~

   静岡市 第2次静岡市茶どころ日本一計画(案)

   島田市 シティプロモーション 島田市緑茶化計画 

       行政情報 賑わい交流拠点整備事業

   ChaOI FORUM ChaOI とは

写真:無料写真素材 写真AC 新茶 m-mix

 

お恥ずかしい文章ですが、最後まで読んでいただきありがとうございます。

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